仕事とは
今日も飲食店にいた頃のお話。
ある日高級なプランをご注文するには、
場にそぐわない身なりの家族が来店した。
全ての席に料理長も顔出し、いつも通り挨拶をする。
いつもの光景だ。
会計時、そのお客様の1人が私に
こうはなしてきた。
近々、舌ガンのオペで2/3の舌を切除しなくてはいけない
母親が最後に来たかったお店を見つけて
来店しているのだそうだ。
お客様は、母は上手く食べることはできませんが、
とても美味しそうに食べていました。
本当にここを選んで良かったです。
ありがとうございました。と。
正直、私の心が震えたことを今でも覚えている。
お客様がお店を出られる時、そのことをシェフに
伝えると、シェフは店先に足早に出向き、
誰よりも長くその家族を見送っていた。
人の心に何かを残せて初めて仕事なのかもしれない。
なんのために、皿に美しく盛り付け、
なんのために真心を込めて運ぶのか?
特別な事をしてほしくて来店される
ゲストは少なく、特別が普段の店が選ばれる。
どの職業にでもあてはまることではないだろうか。