
処方箋はフランフラン(ニュース)


物欲は若さの秘訣か?
異業種×異業種はどこへ向かうか?
処方箋はフランフラン
アインHD、500億円で買ったカワイイ成分
コスメ×雑貨で調剤の次
アインホールディングス(HD)は8月に買収した
家具・インテリア雑貨のFrancfranc(フランフラン)と
連携し始めた。調剤薬局「アイン薬局」やコスメなどを
扱う「アインズ&トルペ」との事業シナジー(相乗効果)は
どうなのか。過去最大の500億円投資は、アインHDの
大谷喜一社長なりの「カワイイ」追求への処方箋だ。
「客層が10歳くらい若返った」早川冬香店長がこう話す
フランフラン札幌ステラプレイス店(札幌市)は
大谷社長が描く未来予想図の一端を具現化している。
同店は隣接する商業施設の営業終了により
JR札幌駅直結の商業施設、札幌ステラプレイス内に
移転開業した。同じタイミングで隣に出店したのが
アインズ&トルペだ。両店を行き来する消費者は
多く、客層を意識してフランフランでは
化粧ポーチなどの取り扱いを増やした。
アインズ&トルペ側は雑貨類をフランフランへ委ね、
コスメに特化した店作りを進める。
カワイイを求めて客が回遊した結果、両店の
1坪あたりの売上高はそれぞれの業態の中で
トップになった。
札幌市内の若い女性が「アイン」と聞いて
思い浮かべるのは、調剤薬局ではなく
アインズ&トルペだ。
20代女性は「フランフランは友人にプレゼントを買うとき。
アインズ&トルペには化粧品を買いにいくので、
日用品も手に入ればさらに便利」という。
アインHDが「美容と健康をテーマにしたドラッグストア」と
表現するアインズ&トルペは82店(9月末時点)
フランフランも152店を構えており、
たまたまでは片付けにくい成果だ。
今後は商品の相互供給を進めるほか
「アインズ&トルペの大型店に『ショップ・イン・ショップ』形式で
フランフランをいれていく」(大谷社長)
小売業に詳しいGマネジメント&リサーチの
清水倫典代表は「アインズ&トルペは一般的な
ドラッグストアとは出発点や発想が違う。
おしゃれでイメージも良く、フランフランとの
親和性は高いのではないか」とみている。
JR新宿駅東口のすぐ近くに位置する
アインズ&トルペ新宿東口店(東京・新宿)でも
若い女性を中心に消費者が次々来店する。
お目当ては地上2階地下1階の3フロアを埋め尽くす
商品構成の9割を占めるコスメ関連商品だ。
ただ、北海道外での認知度は低い。
各地のターミナル駅周辺など通行量が多い
立地に出店してきたものの
石川香織上席執行役員は
「札幌以外では認知度はほぼゼロ。わざわざ来てもらうには
オリジナルのなにかがなければいけない」と認める。
手をこまねいてきたわけではない。2015年に資生堂から
化粧品ブランド「アユーラ」を展開する子会社を買収。
人気の入浴剤などで自前の品揃えを磨いてきた。
韓国化粧品を中心としたアジア発コスメ展開にも力を入れる。
店内の目立つ場所には、美容液「リードルショット」で
知られる観光VTの商品を置く。
コラーゲン入りリードルショットなど、国内では
アインズ&トルペだけで扱うコスメもある。
都内で働く36歳女性は「韓国にいかなくても
欲しいものは大体手に入る」と信頼をよせる。
■調剤上回る小売利益率。業績は上向いている。
アインズ&トルペを中心とした24年4月期の
小売事業売上高は311億円。前の期にくらべ
21%伸びた。セグメント利益率は10%と
主力の調剤薬局事業(7.7%)をしのぐ。
韓国コスメブームの波にのり、存在感は高まる。
ただコスメ以外の目玉はいま一つ。
アインHDはかつて化粧品と客層の重なるアクセサリー雑貨で
オリジナル商品を展開したが長続きしなかった。
ところ変わって、青山通りと外苑西通りが接する
南青山3丁目交差点(東京・港)。フランフランが
旗艦店と位置付ける青山店1階には、アロマディフューザーや
ポーチといったかわいらしさを全面に押し出した雑貨類が
所狭しと並ぶ。
手持ち扇風機「フレ ハンディファン」はその1つ
7月までに累計420万点を販売した。
モバイルバッテリーとしても使える折りたたみ式の
手持ち扇風機も人気。
冬場に人気なのは充電式の「繰り返し使えるカイロ」だ。
シリーズ累計で14万個を販売している。
家具やインテリア用品が並ぶ2階は白を基調にまとめている。
ピンク系で彩る商品が多いフランフランではやや異色だ。
店長や従業員のセンスがフランフランの世界観を支えており、
若い女性から支持は厚い。店頭では春夏や秋冬、
クリスマスなど季節商材コーディネートを提案する。
それだけアインHDにとって、約500億円を費やした
フランフランはアインズ&トルペの欠けたピースを
埋めるコンテンツとして喉から手がでるほど欲しかった。
フランフランは1990年、バルスの名で誕生した。
20~30代の女性を主な対象とした
デザイン性の高い家具やインテリア用品で急成長し、
東証1部銘柄にまで上り詰めた。
ただ2012年にMBO(経営陣が参加する買収)で
上場廃止し、13年にはセブン&アイ・ホールディングスと
資本業務提携。主力ブランドのフランフランへと社名を改めた。
調剤薬局事業は、2年に1度調剤報酬や毎年の薬の改定によって
収益性が不安定になりがちだ。ただ、フランフランも
合わせたアインHDの小売関連売上高は800億円規模。
調剤薬局事業の4分の1以下に過ぎず、フランフラン
買収前の24年4月期で連結売上高が3998億円にお及ぶ
アインHD全体のリスクをカバー出来るほどのボリュームはない。
■二刀流へ小売関連売上高2000億円目標
アインHDは27年4月期に小売関連売上高を
1000億円を目指す。中期的には2000億円まで拡大させる。
商品の相互供給だけでは達成できない数字だ。
アインズ&トルペは今後、郊外商業施設などに大型店出店を広げる。
フランフランとの共同出店も選択肢に入れる。
チャンネルを増やせば店舗展開の幅が増えるほか、
フランフランの知名度を武器にアインズ&トルペに誘客できる。
来店機会の多いアインズ&トルペから、フランフランへの送客も望める。
フランフランのブランド力維持・向上は協業の
成否を左右する。同社はタグライン(理念を表す言葉)に
「かわいくなれ、世界。」を据える。
強みは日常にワクワク感を与える自社インテリア商品を取り入れた
ライフスタイル提案。フランフランの佐野一幸社長は
「一時的なトレンドに合わせた雑貨は一定程並べつつ、
基本的にはインテリアやライフシーンを構成するような品揃えに
していきたい」と語る。
香港の物言う株主(アクティビスト)オアシス・マネジメントは
アインHD株を15%程保有している。7月末の株主総会では
オアシスによる株主提案は全て否決されたが、企業価値向上はかかせない。
大谷社長は8月末、フランフランの社員が集められた場で
「フランフランはフランフランとして、一層ブランド価値を
高めながら成長してほしい」と呼びかけた。
大谷社長にとって、調剤薬局事業に方を並べる
新たな収益の柱の育成は悲願だ。
米大リーグ、ドジャーズの大谷翔平選手ばりの
「二刀流」の実現は、フランフランの強みをどう保ち、
アインズ&トルペに取り込んでいけるか否かにかかっている。
